トップ > 無数では遠慮

光人は糠部の牧場の者だと名乗った。気仙の80嶋の配下と言っても通じはしない。村の男たちは安堵の顔に戻して阿豆流為たちを受け入れた。詐国防に向かう旅の途中だ。この寒さで野宿はきつい。礼はする。泊めてくれぬか天鈴の頼みに村人たちは領いた。1つの小屋に2人ずつが分宿することとなった。阿豆流為は暴れ馬だ。利口だけでなく度胸もある。そなたらへの手助けを断わったのも、そなたらと同列となるのを不服としたせいであろうな。東日流こそ蝦夷を纏める者と思い込んでおる。いかにも蝦夷は東日流から広がった。それも最初は東日流の本拠地を守るために境界を拡大したこと。本流が東日流にあると思い込んだとしても不思議ではない物部と東日流の関わりはいかがで?とうわ官館に我らの本拠があった頃は密接であったが、親父の代から東和に移し、次に薄れた。俺あかがしらも滅多には出掛けぬ。それも赤頭にすれば不本意なことと映っておろうなにゆえ東和に本拠を?小田郡で金が掘られたからだ。朝廷は必ず金を目当てに領土拡大を図る。それを防ぐには鹿角は遠過ぎて動きがままならぬ。赤頭の親父も分かっていたはずだが、俸の赤頭にはよく伝わっておらなんだとみえる天鈴は渋面を作って口にした。